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コアトレーニングの段階的アプローチについて

まず、コアとは、「脊椎(脊柱)をサポートする筋、及び脊椎骨と接する関節(特に肩甲帯と骨盤帯)に関与する筋の総称」と定義して、お話を進めていきます。

 スポーツ動作において四肢は作用点として動作や機能が求められますが、四肢が正しく機能的に動くためには、その支点となる体幹部の役割を無視する事は出来ません。

 

近年注目されているコアトレーニング(体幹トレーニング)は、スポーツ動作の基礎トレーニングであり、パフォーマンス向上や外傷・障害の予防に必要不可欠なトレーニングです。

 

◆コア(体幹)を鍛えないといけない理由は?

先行研究により、ヒトの動作の直前に腹横筋が収縮して腰椎の剛性を高める事で、動作を可能にしていることが明確になっています。


①コア(特に腰椎骨盤帯(Lumbo-Pelvic Region))はすべての動作の源である。

腹横筋は他の筋に先立って収縮を起こし(上肢運動の0.03秒前、下肢運動の0.11秒前)、脊柱の安定性を高める事で、ヒトは四肢を動かす事が可能と言われています。(Hodges PW et al 1996,1997


②体幹の安定性機能が高いと下肢の外傷・障害が減少する。

外傷・障害予防の観点からもコアトレーニングの重要性は明らかになっています。

Darin T. Leetun et al 2004, John D Willson et al 2005)

 

③体幹筋機能とパフォーマンスの向上が関係している。

例として、コアトレーニングを継続的に実施すると垂直跳び、アジリティー能力が向上する。また、垂直跳びの離地時の効率(地面反力)が向上する。(Butcher et al 2007)

 

上記のようにコアトレーニングの効果は、実際のパフォーマンス向上やスポーツ外傷・障害の予防に繋がる事が明らかになってきています。コアトレーニングの目的およびゴールは“神経-筋コントロールを最適に行える”ようになる事、腰椎の安定化、そして効率的な動きを実現するための体幹筋群の強化です。

 

コアトレーニングの進め方は、まず“適切に神経-筋コントロール”を行い、脊柱の安定化を出来るようにならなければいけません。“神経系の適応は強度の高いエクササイズで起こるのではなく、正しい姿勢で正しい動作を行う”事が重要で、それらに加えてバランストレーニングなどの固有受容器を刺激する事で起こります。

 

従って、初期のコアトレーニングはドローイン(ホローイング動作)など非常に地味なものです。そこから段階的にブレイシング→スタビリーティー→etc.と進めていきます。

何らかの建造物と同じようにヒトの身体においても、土台となる基礎が不十分であると、その上に積み上げていく事は出来ません。それゆえに、脊柱の安定化を身につけないと、その先の体幹筋群の強化やスポーツ動作に即したパワー発揮のトレーニングを進めても効果は期待できないものとなります。

 

コアトレーニングと言うとどうしても、体幹筋トレーニングの方法に論点がいきがちですが、今回はその準備段階の話をさせていただきました。スポーツ動作のほとんどが足で地面をとらえ、その床反力をコアに伝達して、上肢または下肢で力発揮をする事で起こっています。

残念ながら、多くの人たちは“コアに力がうまく伝達されていない”だけでなく、“コアで制御した力を無駄なく、効率的に利用する”事が出来ていません。

その代表的な原因は腰椎骨盤帯の前後にある股関節と胸椎・胸郭の可動性(柔軟性)の不足が挙げられます。

 

季節も11月となり、トライアスリートにとってはオフシーズン、ランナーにとってはマラソンシーズン到来となりますが、コアトレーニングは段階的なアプローチが重要となります。

通常のトレーニングやコンディショニングの一環としてコアトレーニングを導入し、継続的にトレーニングを続けていけば、必ず結果に結びつくものとなります。是非試してみてはいかがでしょうか?