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ランニングパーフォーマンス向上につながる高強度筋力トレーニングについて

最近ではランナーやトライアスリートにとって、高強度の筋力トレーニングはパフォーマンス向上に寄与することが分かっています。では、実際にどのように高強度の筋力トレーニングに取り組めばよいのでしょうか? 

今回は実践編として具体的なトレーニングの内容についてお話をします。なお、高強度の筋力トレーニングを行うのはリスクが伴うため、専門のトレーナー等の指導下で行って下さい。

 

先ず“筋力トレーニング”で重要なのは、身体の背面の筋肉を鍛えることです。背面の筋肉は、「肩から始まって背筋、腰、お尻、ハムストリング、ふくらはぎまでの筋肉を総称して“ポステリオールチェーン筋群”と呼び、スポーツで重要な爆発的な力の発揮に、これらの筋群は大きく貢献しています。

 例えば、これらの筋群は身体を前方に押し出す力としてスピードアップに力を発揮しますが、長距離を走りこむだけでは、この筋群を発達させることはできません。しかし“筋力トレーニング”であれば、この筋群に照準を合わせたトレーニング方法は確立しているので、トレーニングの効率も良く、効果も高くなります。

また体幹トレーニングで走行中のブレを減らし、安定性を高めることは広く認識されてきました。これに適切な筋力トレーニングを併用することで、身体を前に押し進める筋力だけでなく、身体のブレを防ぎ、よりパフォーマンス向上に貢献すると考えられます。

 

さてエンデュランス系のアスリートは、“ポステリオールチェーン筋群”を鍛えることで怪我の予防やリスクを軽減し、更なるパフォーマンスアップが望めますが、特に長距離のランニングは“ポステリオールチェーン”の柔軟性を低下させると実証されており、このことは筋力の低下にもつながってしまいます。

また長距離走という競技特性として、筋肉の成長を阻む複数の要因が絡むため(※2021911日号のブログを参照)ランナーが筋肉をつけるのはすごく難しいということです。

これは筋肉のつきにくい長距離ランナーだからこそ、高い負荷でしっかりと鍛えることが必要になり、故障しない強靭な身体があれば、速いスピードでのランニングの練習が可能になり、よりスピードが身につく好循環を続けることにつながります。

 

そしてハムストリングの柔軟性をキープしながら筋発揮する筋力トレーニングは、筋機能に関わる全ての要素の強化通じて、適切に筋活動をコントロールするための“ストレングストレーニング”を意図的に取り入れることがポイントになります。

 

 

筋力トレーニングのポイント

 

○種目:身体の大きな筋肉を使う(大腿、臀部、胸部、背部、腹部など)

Push(押す動作):ベンチプレス、ダンベルプレス、etc.

Pull(引く動作):ラットプルダウン、ロウ、etc.

Hip hinge(股関節を曲げる動作):デッドリフト、レッグプレス、etc.

Squat(スクワット動作):スクワット、ランジ、etc.

Carry or twist(運ぶ / 捻る動作):ウッドチョッパー、メディシンボールスロー、etc.

 

○負荷/頻度

・高重量・低回数で休息をはさみながら1部位/4〜6回×3〜5セット行う

・最低でも1/週は行う

 

○期分け(例:9ヶ月)

最初の3ヶ月は比較的重い重量で4〜6回×4〜5セット

次の期間4ヶ月間は重量とセット数減、回数(レップ数)を増やす(8〜12回×2〜3セット)。

最後の2ヶ月は更に重量を減、上限15回でレップ数を増やす。

徐々にランニングのトレーニングなどを含めた総合的な疲労を抜くよう注意します。レースまでの期間が9ヶ月より短い、または長い場合は3::2のバランスを保って期間を調節する。

 

今回ご紹介した筋力トレーニングはあくまでも補助的な役割です。メインのトレーニングであるランニングに悪影響が出ないよう注意して行います。筋力トレーニングを行う際は、ロングランやハードなランニングセッションから極力遠ざける必要があります。そうすることで、メインとなるトレーニングになるべくフレッシュな状態で臨むことができます。ランニングとストレングストレーニングを同じ日に行う場合は、まずランニングを行い、その後、筋力トレーニングを行うようスケジューリングします。ハードなトレーニングの日と、イージーな日のメリハリをしっかりつけることが継続の鍵です。

 

 

参考文献:

 “Concurrent complex and endurance training for recreational marathon runners: Effects on neuromuscular and running performance