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糖質制限食についての功罪②

2009年にアメリカ栄養士会で報告された4,000人のデータでは、総エネルギーの47%以下の低炭水化物摂取は過体重や肥満の発症に有意に関与していたとあります。逆に最も肥満のリスクが低いのは47~64%の炭水化物摂取。これは日本の食事摂取基準の炭水化物のエネルギー比率の目標量、50~65%に相当します。日本の栄養学の第一人者が引用している8万人の追跡データでも、低糖質より高糖質の食事をしている人の方が死亡率は低いという報告があります。

現在の日本人は炭水化物過多で、余った糖質は脂肪に変換されるから適正量をコントロールすべきという理論が大勢を占めていますが、余った糖質は脂肪に変わりません。余った糖質が脂肪になるのはラットの話。ラットに7割や8割の高糖質食を食べさせたら、それは脂肪になります。ラットの脳は小さい、脳がほとんどなくて糖質が必要ない。

 

 

それを初めて人で証明したのが1999年、アメリカ生理学会でスイスの研究者が発表した論文です。検査機器を着けてベッドに人を寝かせて24時間、炭酸ガスと窒素と酸素の量を測定して代謝量を分析した研究結果があります。

それによると、タンパク質や炭水化物の摂取量を増やしても代謝が上がり、熱に変換されてほとんど消費されますが、脂肪を増やすと余った分は24時間以内にすべて体脂肪になる。脂肪過多で体脂肪が増えるというのは、ラットも人間も一緒です。

しかし人間では糖質は体脂肪になりません。余分にとり過ぎたエネルギーは、体内でどのように代謝されたのか? 糖質のごく一部は脂肪に合成されますが、普段の1.6倍余分にとっても、人間の肝臓では1日10g以上の脂肪は合成されませんでした。一方で脂肪はエネルギーロスなく、そのまま脂肪として蓄積されました。 近年、日本人の肥満者が増えたのは欧米型の食習慣に変わり、脂肪過多の食生活になったからと考えられます。

 

糖質を減らすリスクには、さまざまなエビデンスがあります。

・朝食、特に炭水化物を食べない場合、脳卒中で亡くなるリスクは36%上昇する。(大阪大学)。朝の欠食は、肥満そして高血圧につながる。人間の脳は24時間エネルギー(糖質)を使っているので、朝は低血糖状態です。

“朝食を抜くとさらに血糖値が下がる→体は一気に飢餓モード→できるだけエネルギーを使わない状態にスイッチする→昼食を食べる→エネルギー備蓄しろ!”結果、確実に脂肪が増えます。

 

一方で、朝の低血糖時には、脳のために血糖値をあげるホルモンがたくさん放出されます。

“血管が収縮、血圧が上がる→低血糖で筋肉のエネルギーとなる遊離脂肪酸が増え→血液はネバネバ→グリコーゲンも底をついて脱水状態→血中水分も少ない”結果、血管が詰まる、破裂する。脳卒中や心筋梗塞の確率が飛躍的に増える原因になります。 

また18歳以上、4451人を対象にしたアメリカの研究では、1日の炭水化物摂取量が総エネルギーの47%以下の場合に肥満リスクが高く、47~64%の摂取量の場合最もリスクが低いという結果が報告されています。もうひとつ、男性44000人を20年間、女性88000人を26年間追跡した調査には、炭水化物を35%しかとらなかった人の死亡率は、60%をとっていた人の1.5倍であるとのデータもあります。