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運動で最も体脂肪を減らすには「筋力トレーニング」?「有酸素運動」?②

筋力トレーニングと有酸素運動はそれぞれをどれくらいやればいいのか?

 効果的な筋力トレーニング+有酸素運動の時間配分や頻度を考えると、全ての人に有効となる万能のプログラムはありません。

トレーニングの目的が体重を減らすことなのか、逆に筋肉をつけることなのか、またはパワーを増やすことなのか、あるいは持久力を高めることなのかなど、目的によって筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせるバランスは異なってきます。

 

 

ここで数多くの研究を分析するメタ解析手法を使って、筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせを研究した2011年の論文を紹介します。

Concurrent training: A meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises.
Wilson, J. et al. 2011

 

この研究は、21個の既存研究から442個のケースを解析した膨大な論文です。

この中では筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた場合における4つのポイントが示されています。

以下は、前述の論文に記載された、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた場合の4つのポイントです。

 

 有酸素運動に上半身の筋肉量や筋力への悪影響はほとんどない。

 有酸素運動の時間が長くなればなるほど、下半身の筋肉量や筋力が低下する。

 筋力トレーニングとランの組み合わせが体脂肪を減らすためにもっとも効果がある。

 筋力トレーニングと自転車の組み合わせが筋力を維持するためにもっとも効果がある。

 

    有酸素運動を行っても「上半身」の筋力にはほとんど影響がありませんが、部位によっては、長時間の有酸素運動は筋力トレーニングで得た筋肥大やパワー強化の効果が減ってしまうことです。

数多くの研究で上半身の筋肉量やパワーは、有酸素運動によって影響をほとんど受けない、ということがわかっています。たとえば、ベンチプレスで胸や腕を追い込み、パンプアップさせた後、ジョギングなどをしても、せっかくの努力が台無しになってしまう心配はいらないということです。しかし、パワー系の競技種目や筋肥大に目的を置いた場合、スクワットなどで下半身を鍛えた後の有酸素運動には注意が必要です。

 

    有酸素運動にかける時間と頻度については、130分以上の有酸素運動は、下半身の筋力トレーニング効果を低下させます。有酸素運動を行う時間が130分を超えると、おもに下半身の筋力トレーニングの効果が下がり始めます。その後は有酸素運動時間が長くなるに伴い、下半身の筋力トレーニング効果は反比例して低下する傾向が続きます。そして、1日あたりの有酸素運動の時間が60分を越えると、筋肥大効果がほぼゼロになってしまいます。

また有酸素運動が週3回を超えると、筋トレ効果が低下しやすくなります。有酸素運動を行う頻度も、筋肉への影響を大きく左右し、週1回の有酸素運動なら、ほとんど悪影響はありませんが、同時に脂肪を燃やす効果は期待できません。有酸素運動が週3回を超えると、筋力トレーニングの効果が低減する程度が大きくなってきます。そのため、特にウェイトリフターなどのパワーを必要とするタイプのスポーツ選手は、有酸素運動にかける時間を130分、週3回以内に抑えることが望ましいことになります。

筋肥大やパワーより、持久力を高めたい人、あるいは減量(ダイエット)が目的の人は、有酸素運動をそれより多く行うことがポイントになってきます。

 

    脂肪を効果的に燃やすにはランニング、筋力を維持するなら自転車をお勧めします。一般的な有酸素運動には、ランニングや自転車、水泳などが上げられます。その中で筋力トレーニングと組み合わせた際、脂肪燃焼の効果はランニングがもっとも高いことがわかっています。減量(ダイエット)目的の人は有酸素運動にランニングを選ぶのがポイントです。

 

④ 自転車と水泳は、脂肪を燃やす効率で比較するとランニングより低くなります。その代わり、筋力トレーニングの効果が減少する程度はランニングに比べて少なくなり、最大筋力やパワーを落とすことなく、心肺能力や持久力を高めたいアスリートは、有酸素運動に自転車を選ぶのがポイントになります。

 

トレーニング科学とは条件さえ満たせば、誰が・どこで・いつ行っても同様に成果を出せるものです。次回からも皆さんに有益な情報を配信してまいります。どうぞ宜しくお願いいたします。