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暑熱環境での熱中症対策

 8月に入り連日、35度を越える日が続いています。気温が高いときほど、また同じ気温でも湿度が高いときほど、熱中症の危険性は高くなります。猛暑に限らず、暑い環境の中で身体活動を行うと、体温が過度に上昇します。体温が過度に上昇すると熱中症の発生リスクが高まるので、水分補給や氷・水などで体を冷やす暑さ対策は有効な手段です。

 

「スポーツ選手は運動前と比較して運動後の体重損失が2%以上にならないように、運動中のみならず、運動前から計画的な水分摂取を行っています。

脱水が体重の2%までであれば著しい体温上昇の心配はありませんが、それ以降1%の脱水につき、直腸温の約0.3℃の上昇と心拍数の増加(10拍/分)が引き起こされます。

 

具体的には2%の脱水で持久性パフォーマンスの低下、3%以上で瞬発的なパフォーマンス発揮の指標となるジャンプ力が低下するといわれており、発汗によって失われた電解質を補給するためには、スポーツドリンクが有効です。

 

 

成分の目安は糖質であれば、38(38g100ml)、電解質(ナトリウム)40~80mg 100ml程度(0.1  0.2% の食塩水に相当)が目安になります。経口補水液はこれより少し塩分濃度が高く、0.3%弱の食塩濃度です。

糖質が入った飲料の吸収速度は515℃程度で摂取したほうが、25℃以上より吸収性が高く、腹痛を起こしやすいなどの問題がなければ、冷やして飲んだ方が効果的です。10分で150ml(紙コップ1杯分)程度を目安とし、運動後に体重の減少が運動開始時の2%以内に抑えられていれば、水分補給量は適量(適切)であったと考えられます。

 

次に暑さ対策は“運動前から行う”ことが重要です。体温を下げておくことは発汗量を抑えることにつながり、身体は温まりにくい状態を維持することができます。指導者を含めスポーツの愛好者、スポーツ選手は、常日頃から効果的な身体冷却と水分補給を心がけながら、スポーツ活動に取り組んでいく必要があります。

 

暑熱環境で身体活動を行う際は、外部冷却、内部冷却それぞれの方法をいくつか組み合わせて行うことで、皮膚温と深部体温の低下を図ることができます。外部・内部冷却の併用はとくに気温や湿度が高いときに効果的です。

 

外部冷却は身体の外から冷却する方法で、皮膚温の低下に効果的とされています。スポーツの現場で最も頻繁に行われているアイスパックを用いた冷却や冷水浴、風の利用のほか、より効果的とされるアイスベスト(保冷剤を収納したベスト)の着用も外部冷却に含まれます。

外部冷却を行うと皮膚温は瞬時に低下するため即効性が高く、暑さ対策としては極めて有効な手段といえます。冷たさを感じる感覚器の密度は一般に前額部(おでこ)で最も高く、次に胸、前腕と続きます。氷を額にあてることが好まれるのは、温度を感じる感覚器が密集していることも関係しています。一方、深部温は狭い範囲の外部冷却ではほとんど変化ありません。

 

深部温の低下に有効だと考えられるのが、内部冷却を組み合わせた方法です。内部冷却は身体の内部からの冷却、冷たい水を飲む(冷水摂取)ことなどを指します。細かい粒子状の氷(アイススラリーやクラッシュアイス)を飲むことで、ただの冷めたい飲料を飲むより冷却効果が期待できます。これは、氷のまま体内に取り込むことでその融解熱の分が上乗せされて、身体の内部から熱を奪うからです。

 

猛暑の中で行う練習や試合中にアスリートが行っている効果的な暑さ対策は、前腕部(手指含む)を冷水に浸ける『前腕冷却』があります。具体的な方法は下記の通りです。

 

    バケツや大きめのクーラーボックスなどの水を貯められる容器を準備する。

 

    水を貯めた容器に手掌部から前腕部を浸ける。

※水温は10-15℃付近で行う。冷た過ぎると血管が収縮して冷却効率が下がる。概ね10分程度、短時間でも冷涼感や皮膚温の低下は得られる。

 

     手頃な容器がない場合は、冷やしたペットボトルを握ったり、その水を前腕や手にかけたりするなどして、腕からの熱放散を促す。

 

同様に、脚を冷やすのも効果的です。腕や脚は体幹部と比較して表面積の比が大きく特殊な血管を備えているため、熱を身体の外に逃がしやすい構造となっています。研究報告では、体幹部の表面積比を1とした場合、腕は5倍、手指は22倍、足では69倍の結果が出ています。

 

猛暑の中でも体調をベストな状態に保ち、圧倒的なパフォーマンスを発揮するには、効果的な身体冷却と水分補給の方法を知り、日常の暑さ対策に役立てていくことをお勧めいたします。