暑熱環境時のトレーニングやレース中には、同じタイム(ペース)を維持しているにも関わらず心拍数が上昇していく傾向が強くなることが観られます。
これは「カーディアックドリフト」と呼ばれる生理学的現象で、主に疲労や体内の水分量が減少し「脱水状態」に陥ることによって起こると考えられています。
もともと心拍数は内的・外的な因子に左右されることがあり、深部体温、カフェインなどの刺激物、心理状態(興奮・緊張)、体内の水分(電解質のバランス)、高度上昇、疲労などの影響で大きく変化します。
先日、沖縄、奄美地方の梅雨入りが発表されましたね、これから南九州地方から梅雨入りが始まり、7月からはジメジメした梅雨の後、本格的な暑さが訪れます。
さて皆さんは、炎天下の屋外や熱のこもった環境のレースやワークアウトで、身体が思ったように動かず、力が発揮できなかった経験はありませんか?
特に身体の深部温度の上昇は持久性運動のパフォーマンスを低下させることが知られています。
これまで1時間あたり体内に吸収できる炭水化物の量は、60gが限界とされていました。
しかし近年明らかになった"マルチトランスポーター法”であれば60g以上の炭水化物を吸収することが可能であることが、スポーツ栄養学の世界ではわかってきました。
このマルチトランスポーター法の理論を使ったドリンクで、ランナーの皆さんがよくご存じなのは”MAURTEN”です。
またサイクリストやトライアスリートの中では”BETA FUEL”を使っている方が多いようです。
これは「1時間あたりで吸収できる炭水化物の量をブースト(過給)する」というところから人気を得ています。
これらは「マルトデキストリンとフルクトースを2:1で混合した飲料」でデュアルソースドリンクと呼ばれ、体内で異なる輸送隊を使って消化吸収されるので多くの炭水化物(糖質)を供給する事ができる優れものです。
8月に入り連日、35度を越える日が続いています。気温が高いときほど、また同じ気温でも湿度が高いときほど、熱中症の危険性は高くなります。猛暑に限らず、暑い環境の中で身体活動を行うと、体温が過度に上昇します。体温が過度に上昇すると熱中症の発生リスクが高まるので、水分補給や氷・水などで体を冷やす暑さ対策は有効な手段です。
「スポーツ選手は運動前と比較して運動後の体重損失が2%以上にならないように、運動中のみならず、運動前から計画的な水分摂取を行っています。
脱水が体重の2%までであれば著しい体温上昇の心配はありませんが、それ以降1%の脱水につき、直腸温の約0.3℃の上昇と心拍数の増加(約10拍/分)が引き起こされます。
具体的には2%の脱水で持久性パフォーマンスの低下、3%以上で瞬発的なパフォーマンス発揮の指標となるジャンプ力が低下するといわれており、発汗によって失われた電解質を補給するためには、スポーツドリンクが有効です。
最近ではランナーやトライアスリートにとって、高強度の筋力トレーニングはパフォーマンス向上に寄与することが分かっています。では、実際にどのように高強度の筋力トレーニングに取り組めばよいのでしょうか?
今回は“実践編”として具体的なトレーニングの内容についてお話をします。なお、高強度の筋力トレーニングを行うのはリスクが伴うため、専門のトレーナー等の指導下で行って下さい。
先ず“筋力トレーニング”で重要なのは、身体の背面の筋肉を鍛えることです。背面の筋肉は、「肩から始まって背筋、腰、お尻、ハムストリング、ふくらはぎまでの筋肉を総称して“ポステリオールチェーン筋群”と呼び、スポーツで重要な爆発的な力の発揮に、これらの筋群は大きく貢献しています。
皆さん、こんにちは!
前回のブログでは、筋力の向上について基本的な考え方をご紹介しました。下記にありますように、筋力は、大まかに3つの要因によって決定されます。
①骨格筋の横断面積(筋の太さ)
②筋線維組成(速筋線維と遅筋線維のバランス)
③神経系の適応(筋と神経の連携)
また持久性トレーニングと高強度の筋力トレーニングを組み合わせた際に筋力が向上しますが、その構成要素は、
①骨格筋の横断面積は全くもしくは、ほとんど増加しない。
②筋線維組成も先天的に決まる要素が大きく、後天的には少なくとも筋力の増大に有利な適応は起きにくい。したがって、持久性トレーニングと高強度の筋力トレーニングを組み合わせた際に起こる筋力の増大は、③神経系の適応に大きく依存すると考えられます。
前回のブログは下記のタイトルでウエイトトレーニングの有効性のお話をしました。
“ランニングのパフォーマンスを上げるためには、ストレングストレーニングは有効か?”
過去、ウエイトトレーニングによって骨格筋が肥大することは、筋力アップにつながり一部のアスリートにとって好ましい変化であるが、持久系アスリートにとっては、必ずしもポジティブな効果があるとは限らないと言われてきました。
その理由として大きく2つの要因が考えられます。
今回のブログは、長距離ランナーのパフォーマンスに重要な要因の1つである“ランニングエコノミーはストレングストレーニングにより改善が期待できる”ことを紹介させていただきます。
ランニングをはじめとする長距離競技のパフォーマンスを決定付ける要因を3つあげると、下記の3つの指標があげられます。
①最大酸素摂取量(VO2Max):換気量
②乳酸性作業閾値(LT):血中乳酸濃度
③ランニングエコノミー:効率の良い動き(筋力、スティフネス、フォーム、他)
この中の“ランニングエコノミー(running economy)”とは、一定スピードでのランニングなどの最大下運動課題に対する酸素摂取量とされており(Cavanagh and Kram,1985)、車で言うところの燃費が良いか悪いかという指標になります。
結論から言うと、月間走行距離は、競技種目や競技レベルにより適正な距離が大きく変わりますが、適正なトレーニング強度配分は同様になります。
エリートアスリートの場合は、週に2回程度の高強度トレーニングを織り混ぜながら、なるべく高頻度で低強度トレーニングを行い、長期的に継続可能な範囲で月間走行距離を増やしていくことが大切です。
さて持久系アスリートのトレーニング処方では、よく月間走行距離が注目されますが、月間走行距離はあくまで“トレーニング量の指標”でしかありません。
月間走行距離の大小だけで、良いトレーニングか?、悪いトレーニングか?が決まるわけではありません。
私事ですが、2022年も引き続き“GARMINアンバサダー”として活動させていただいております。“GARMIN”を使ったワークアウトや健康管理は、私自身のトレーニングも含めて、健康的なライフスタイルの構築と競技パフォーマンスの向上に対して、多くの有益な情報を与えてくれます。
現在、このような心拍数を測定する“ウェアラブルデバイス”は広く普及し、多くのスポーツ愛好者の手に届くものとなりましたが、表示される心拍数や抽出された値が、どういった意味を持つのか?どういった効果があるのか?といった所は、まだまだ浸透されていないと思われます。
トレーニングを正しく行うには、主観的な感覚だけでなく、客観的な数値も活用することが重要です。心拍数は運動中の“相対運動強度”を知ることができる客観的指標の一つです。
この客観的指標の一つである心拍数を用いることで、より適切なトレーニング処方につながることになり、万人に同じようなトレーニング負荷を与え、スピードやタイムが当てにならないような環境でも、適切な強度設定が可能になります。